※この記事は、小規模店舗を開業する前に資金計画を作った時点の記録です。主題となる自己資金額以外の金額は、匿名性に配慮して一部を概数で記載しています。
店舗を開業するとき、用意した自己資金をどこまで店舗づくりに使うべきか。
これは、セミパーソナルジムの開業準備で最後まで意識していたことの一つでした。
今回、私が用意した自己資金は700万円です。
ただし、700万円を「開業までに使える予算」とは考えませんでした。物件、内装、設備にお金をかけようと思えば、いくらでも使えてしまうからです。
最初から、
- 店舗をつくるためのお金
- 開業後も事業を続けるためのお金
を分け、会員数が安定するまでの運転資金を先に残すことにしました。
この記事では、自己資金700万円をどのように配分し、何を抑え、何にはお金を使うことにしたのかをまとめます。
開業までの全体の流れや物件選びについては、会社員がセミパーソナルジムを開業するまで|資金計画と物件選びの実録でまとめています。
自己資金700万円は、もともと別の投資に使う予定だった
今回の自己資金は、もともと不動産投資など、別の投資機会に使うつもりで確保していた余剰資金でした。
しかし、条件に合う投資先がなかなか見つからず、結果として手元に残っていました。
その一方で、金利はやや上がり始めていました。新たに借り入れを行い、金利を負担しながら店舗を始めるより、手元にある資金の範囲内で事業を組み立てた方がよいのではないか。
そう考え、今回は外部から借り入れをせず、自己資金だけで開業する方針にしました。
もっとも、自己資金だから自由に使ってよいわけではありません。
借り入れのように毎月の返済額が見えない分、かえって支出の歯止めが利きにくくなる可能性もあります。
そこで、物件を契約する前に、費用項目ごとの上限と、開業後に残す金額を決めました。
700万円を「店舗づくり」と「事業継続」に分けた
資金計画では、物件取得、内装、器具・備品、システム、広告、開業準備などを積み上げました。
その結果、開業前の支出は400万円台、開業時に残る手元資金は200万円台を想定しました。
比率でいえば、自己資金のおおむね3分の2を開業準備に使い、残り3分の1程度を運転資金として残す計画です。
これは、最初から3分の2を使おうと決めたというより、必要な費用を一つずつ見積もり、そのうえで事業を続けるために必要な資金が残るかを確認した結果でした。
収支計算上の損益分岐点は、会員数で20人台前半です。
料金プランと損益の考え方については、セミパーソナルジム開業時の料金設定|通い放題にしなかった理由で詳しくまとめています。
ただし、開業直後から損益分岐点に達するとは考えていませんでした。会員数が少ない期間にも、家賃、人件費、広告費、システム費などは発生します。
開業資金を考えるときに重要なのは、店舗を完成させられるかだけではありません。
損益分岐点へ到達するまで、どの程度の期間を耐えられるかも含めて考える必要がありました。
物件取得と内装には上限を設けた
特に意識したのは、物件取得と内装にかかる費用です。
私は、この二つを合わせて300万円以上はかけたくないと考えていました。
店舗物件では、契約金だけでなく、内装の状態によって開業費用が大きく変わります。
何もないスケルトン物件の場合、給排水やトイレなどの水回りを一から設置する必要があり、工事費が高くなる可能性があります。
一方で、募集上はスケルトンとされていても、水回りなど一部の設備が残っている物件もあります。そのような物件であれば、工事内容を抑えられる可能性があるため、有力な候補として考えていました。
器具・備品については、100万円前後を見込んでいました。
必要な器具を削りすぎれば、提供できるトレーニングの質に影響します。そのため、単に初期費用を安くするのではなく、サービスに必要なものは確保しながら、物件と内装で予算が膨らみすぎないようにしました。
私は、開業前の固定費と初期費用の設計で、事業の勝負はある程度決まると考えていました。
毎月の支出を抑え、一定の品質でサービスを提供し、マーケットに居続けることができれば、改善する機会を持ち続けられるからです。
自分で作れるものは自分で作った
支出を抑えるため、自分で作ることにしたものもあります。
その一つが予約システムです。
当初は既存の事業者向けサービスを利用することも検討しました。しかし、初期費用に加えて月額費用も継続的に発生します。
そこで、多少のプログラミング経験があったことと、AIを活用すれば実現できる可能性があると考え、自分で開発することにしました。
ホームページとLPも同様です。
外部へ制作を依頼すれば、それぞれ数十万円規模の費用を見込む必要があります。また、公開後に内容を変更するたび、追加費用や依頼の手間が発生する可能性もあります。
自分で作れば、初期費用を抑えられるだけでなく、料金、体験の流れ、営業時間、訴求内容などを必要なときに修正できます。
開業前は、実際に顧客からどのような反応があるか分かりません。最初から完成形を作るより、公開後も変更できる状態にしておく方が重要だと考えました。
もちろん、自作には時間がかかり、保守も自分で行う必要があります。そのため、誰にでも適した方法ではありません。
私の場合は、持っていた知識とAIを使うことで、外部へ支払う費用を抑えながら、変更しやすい仕組みを持てると判断しました。
広告費は削らなかった
一方で、開業前から一定の費用をかけると決めていたのが広告です。
どれだけよいサービスを用意しても、存在を知ってもらえなければ、利用を検討してもらうことはできません。
これは、マーケティングを学ぶ中で強く意識するようになった考え方です。
内装やホームページを豪華にするために予算を使い切り、開業後に顧客へ知らせる資金が残っていない。それでは、サービスの良し悪しを評価してもらう段階まで到達できません。
そのため、広告費は「余ったら使うお金」ではなく、開業時点から必要な費用として資金計画に組み込みました。
削る費用と、削らない費用を分けるときの基準は、それが顧客に価値を届けるために必要かどうかでした。
運転資金は「改善する時間」を確保するお金
開業後の会員数については、一つの予想だけを置かず、保守的なケース、標準的なケース、順調に伸びるケースの三つを作りました。
それぞれについて、向こう1年間の売上、費用、損益、手元資金を試算しています。
また、3か月、6か月、12か月という節目を設け、会員数や売上だけでなく、手元資金、集客状況、改善できる余地などを確認する方針にしました。
基準に届かなかったからといって、すぐに撤退するわけではありません。
何が計画と違ったのか。改善策を講じられるのか。その方針について、運営に関わるメンバーの合意を得られるのか。
数字と状況の両方を確認したうえで判断します。
そのためにも、手元資金が必要です。
運転資金は、単に赤字を埋めるためのお金ではありません。
広告を試し、サービスを見直し、予約や運営方法を改善し、事業が成立する形を探るための時間を確保するお金だと考えています。
自己資金が多くても、使い切れば選択肢はなくなる
自己資金700万円で開業すると決めたとき、最も大切にしたのは、700万円でどれだけ立派な店舗をつくれるかではありませんでした。
開業後も改善を続けられる状態を、どれだけ長く維持できるかです。
物件と内装には上限を設ける。
自分で作れる仕組みは自分で作る。
一方で、顧客に知ってもらうための広告費は確保する。
そして、会員数が損益分岐点に達するまでの運転資金を残す。
この順序で考えた結果、自己資金の全額を店舗づくりには使わない資金計画になりました。
この判断が正しかったかどうかは、開業後の実績を見なければ分かりません。
今後、一定期間の実績が蓄積した段階で、当初の資金計画と実際の支出、会員数、手元資金がどの程度違ったのかも振り返りたいと思います。

