店舗の内装工事では、工事の途中で追加費用が発生することがあります。
仕様を変更した、新しい工事を依頼した、施主が用意する材料の到着が遅れた。こうした事情によって施工会社の作業が増えるのであれば、追加費用が発生すること自体は不自然ではありません。
難しいのは、「追加費用が発生すること」と「提示された金額が妥当であること」は別だという点です。
私たちの店舗でも、施主側で用意した床材が不足し、不足分を別途手配することになりました。施工会社からは、この状況を「荷物の遅延」として、数万円の追加費用を請求されました。減額交渉を行いましたが、減額されたのは数千円程度で、請求額の大部分を支払いました。
床材の必要枚数について明確な指定を受けていなかったとはいえ、こちらも施工会社へ確認せずに発注しています。その点は施主側の確認不足でした。
一方で、どの作業が増え、誰がどれだけ待機し、なぜ工期を延ばす必要があるのかについて、十分な説明を受けないまま費用を承認してしまいました。
内装業者の選定から工程表、引き渡し確認までの全体的な反省は、第6号「店舗の内装工事で後悔しないために」でまとめています。
今回は論点を追加費用に絞り、施工会社から追加の金額を提示されたとき、承認する前に何を確認し、何を記録しておけばよかったのかを整理します。
追加費用が発生することと、金額の妥当性は別
工事中に当初の予定と異なる事態が起これば、追加費用が必要になることはあります。
しかし、「追加作業が発生します」と説明されただけでは、提示された金額がどのように算出されたのかは分かりません。
追加費用を判断するには、少なくとも次の二つを分けて考える必要があります。
- 当初契約の範囲外となる作業が、本当に発生したか
- その追加作業に対する請求額が、どのように計算されたか
私たちの場合、床材が不足したことで何らかの調整が必要になった可能性はあります。ただし、追加になった作業の内容や待機時間は、具体的には分かりませんでした。
追加作業の存在を認めることと、金額をそのまま承認することを、一つの判断にしてはいけなかったと思います。
最初に「なぜ追加になったのか」を分類する
追加費用の説明を受けたら、まず原因を整理します。
例えば、次のような原因が考えられます。
- 施主が工事内容や仕様を変更した
- 施主支給品の不足や到着遅延があった
- 解体後に、事前には分からなかった状態が見つかった
- 当初の見積もりに必要な作業が含まれていなかった
- 施工上のやり直しや手戻りが発生した
- 天候や建物側の事情で工程を変更した
原因によって、誰がどこまで費用を負担するのかという考え方も変わります。
今回の床材不足については、必要枚数を事前に確認しなかった施主側にも確認不足がありました。だからといって、提示された追加費用を内訳の確認なしに承認しなければならないとは限りません。
「こちらにも責任がある」という気持ちと、「請求内容を確認する」という作業は分ける必要がありました。
当初契約と比べて何が増えたのかを確認する
次に確認したいのは、当初の契約内容と比べて何が増えたのかです。
追加費用というからには、当初の見積もりに含まれていなかった材料、作業、人員、日数などがあるはずです。
確認したいのは、例えば次のような内容です。
- 新たに必要になった作業
- やり直しになった作業
- 追加で必要になった材料と数量
- 増員した人数と作業時間
- 延長した日数
- 待機が発生した時間
- 配送や再訪問にかかる費用
当初の見積もりが総額中心で、材料費や作業費の内訳が粗い場合、何が増えたのかを比較すること自体が難しくなります。
私たちの契約も、材料ごとの金額や各日の工数が分かる内容ではありませんでした。そのため、追加請求を受けた段階で、当初価格との差分を検証できませんでした。
追加費用の問題は、追加請求が来た日から始まるのではありません。契約時に、何をいくらで依頼したのかを確認できる状態にしておくことから始まっています。
「作業費」と「待機費」は具体的に聞く
今回の説明では、追加作業や待機が発生すると伝えられました。
しかし、どの作業が追加され、誰が何時間待機するのかまでは確認できていませんでした。
「作業が増える」「待機が発生する」という表現だけでは、金額の算定根拠を判断できません。
少なくとも、次のように具体化してもらう必要がありました。
- 追加作業の名称と内容
- 作業する人数
- 予定している作業時間
- 人件費や作業費の計算方法
- 待機する人と時間
- 待機中に別の作業を進められない理由
- 材料費、交通費、配送費などの実費
小規模な工事では、施工会社がすべてを細かな単価表で管理しているとは限りません。それでも、「何のために、いくら増えるのか」が分かる程度の説明は求めた方がよいと思います。
工期延長は、変更前後の工程で確認する
床材の追加手配後、私たちは工期を1日延ばす必要があると説明され、その費用を負担しました。
ところが、実際の工事は、延期前に示されていた当初の予定日より早く完了しました。
結果的に、追加された1日は必要ありませんでした。さらに、当初示されていた完了予定日自体も、実際の作業期間よりかなり余裕を持って設定されていたことが分かりました。
ただし、工事が早く終わったという結果だけで、追加費用のすべてが不要だったと断定することはできません。人員や作業順を調整した結果、工事が早く進んだ可能性もあります。
問題は、変更前後の工程表がなかったため、1日の延長がどの工程に必要だったのかを、施主側で検証できなかったことです。
工期延長の説明を受けたときには、次の点を確認すべきでした。
- どの作業が止まるのか
- 材料が届くまでに進められる作業はないか
- 変更前の完了予定日はいつか
- 変更後の完了予定日はいつか
- 延長によって増える作業や人員は何か
- 工程を組み替える代替案はないか
- それぞれの日に、どの作業を予定しているのか
「1日延びるから1日分の費用が増える」という説明だけでなく、その1日で何を行うのかを確認する必要があります。
完了予定日だけで判断するのではなく、毎日の作業工程を確認しておくべきでした。
作業を始める前に金額を承認する
追加費用は、作業が終わって請求書が届いてから交渉するより、追加作業を始める前に確認した方がよいと感じました。
作業後では、すでに人員を手配した、作業を実施した、費用が発生したという説明になります。発注側が金額に疑問を持っても、工事を元に戻すことはできません。
追加作業へ着手する前に、少なくとも次の内容を書面で確認します。
- 追加費用が発生する理由
- 当初契約から増える作業
- 金額と計算根拠
- 工期への影響
- 追加作業を行わない場合の影響
- 発注側が承認した日
急いで判断する必要がある場合でも、電話だけで終わらせず、メールやメッセージで内容を残します。
正式な変更契約書を毎回作れない小規模工事でも、施工会社から提示された内容に対して、「上記の内容と金額でお願いします」と返信すれば、最低限の記録になります。
追加費用の確認メモ
次に内装工事を依頼するときは、追加費用の連絡を受けた段階で、以下の内容を1枚にまとめます。
発生理由
- 何が起きたか
- いつ判明したか
- 原因は何か
- 施主、施工会社、第三者のどこに関係するか
当初契約との差分
- 当初契約に含まれていた作業
- 新たに増える作業
- 追加または変更する材料
- やり直す作業
金額
- 材料名、数量、単価
- 作業人数、時間、単価
- 待機人数と時間
- 配送費や再訪問費
- 税込みの追加総額
工程
- 変更前の工程
- 変更後の工程
- 延期する日数
- 影響を受ける作業
- 延期を避ける代替案
承認
- 施工会社から説明を受けた日
- 見積書やメッセージを受け取った日
- 発注側が承認した内容
- 承認した日
すべての項目を厳密に埋めることが目的ではありません。
重要なのは、後から「何に対して支払ったのか」を双方が確認できる状態にすることです。
値引き交渉より、請求前の確認を重視する
私たちは追加請求を受けた後に減額交渉を行いましたが、減額されたのは数千円程度でした。
工程表も、詳細な見積内訳も、追加作業の記録もない状態では、どの金額が過大なのかを具体的に示すことができません。
今回の経験から、追加費用への対策は、請求後に強く値引きを求めることではないと感じました。
当初契約の内訳を確認し、追加作業の内容と金額を着手前に書面で承認する。その方が、発注側と施工会社の双方にとって、納得できる形で工事を進めやすくなります。
まとめ
内装工事では、施主側の仕様変更や材料不足によって、追加費用が発生することがあります。
追加費用が発生すること自体に納得できても、提示された金額を確認せずに承認する必要はありません。
承認前に確認したいのは、次の5点です。
- 追加費用が発生した原因
- 当初契約から増える作業や材料
- 人数、時間、単価などの計算根拠
- 工程への影響と代替案
- 着手前の書面による合意
私たちは、床材を不足させたという施主側の責任を意識するあまり、追加費用の具体的な根拠を十分に確認できませんでした。
自分たちに落ち度があることと、請求内容を確認することは両立します。
追加費用が必要になったときこそ、感情的に拒否したり、反対にそのまま受け入れたりせず、当初契約との差分を一つずつ確認する。
それが、今回の経験から得た教訓です。

